和傘の使い方・大切に使うお手入れのヒント

(初出:長良川STORY 2018/1

初心者でも簡単! オシャレ上級者に見える、和傘の普段使い


和傘って素敵だな、と思っていても 自分で使うイメージが湧かない人、必見!
洋服の日も気軽に和傘を使えば、さりげなくかっこいい大人に見えますよ。
伝統工芸品だからと大切にしまい込むより、ぜひ日々気軽に取り入れてみてください。

店長直伝!
和傘を日常に取り入れる、基本のキ

 和傘を販売している「和傘CASA」店長の河口さんも、 普段から雨の日に和傘を使っています。
 河口さんに、使い方の基本を教えてもらいました。

和傘で感じられる、5つの「いいこと

 そもそも和傘を使うと、どんないいことがあるのでしょうか。
1. 華やかな色に包まれる
 まずは、ぜひ本物を一度手に取ってみてください。
 開いた瞬間に、パッと広がる美しい空間。
 柄物の傘なら、まるで万華鏡の中に入ったよう。さながら、プライベートなプラネタリウム。
河口「布を張った洋傘やビニール傘とは違う、和紙だからこその光の拡散がきれいです」
 雨傘は、和紙に防水のための油を塗ってあるので、雨の日でも十分透け感を楽しめます。
 40本以上の竹の骨が等間隔に影をつくり、美しいかがり糸が花のように広がることで、
凛とした雰囲気が漂います。
実用品から生まれた美しさ=「用の美」です。
 
2. 通り過ぎる人が振り返る
 着物を着た日に、すれ違う人々の視線を感じて、ちょっとした優越感を感じることがありますよね。あの感覚です。
 着物は気軽に着られなくても(まして雨の日には!)、和傘ならどんな洋服の日でも、コーディネートのポイントになります。
 和傘は安いものとはいえませんが、コートやバッグと同じくらいの値段で、日々使うと思えば、元はとれそうです。
 ご年配の方から「私たちのころは、お嫁に行くときに、母から1本、持たされたものよ」と声をかけられたことも。
 コミュニケーションのきっかけにもなりそうですね。
  和傘(wagasa)岐阜
3. 雨の音、さすときの音、油の香り、漆の感触
 ぱらん、ぱらん という、和紙に落ちる雨の音。
 傘を開くときのハジキ(止具)のポンッという音。
 エゴマ油、アマニ油といった、昔ながらの油の香り。
 竹に塗られた漆の感触など……。
 日本の風情を感じられて、背筋がしゃんとする思いです。
  雨の日、和傘
4. いいものを大事に使う気持ち
 台風の翌日にビニール傘が町に捨ててある光景より、傘一つも、大事に使う気持ちでいたい。
 「傘、すぐなくしちゃうんだよね」なんて言わずに、いいものを持つ豊かさを、身につけてみませんか。
 使う人がいるからこそ、和傘作りの技術が守られていきます。
 日本には、岐阜には、こんないいものがあるよ、と、自分のふるさとを誇りに思えば、 ひいては自分自身のことも大事にできるかもしれません。
5. 雨の日が楽しみになる
河口「色、音、感触。和傘でしか体感できない楽しみがあると思います。
 いつもは憂鬱な雨の日がちょっと楽しみになることですかね。(自慢気)」
  和傘を
たたむ

使うときに気をつけるコツ

木漏れ日と和傘 「とはいえ私なんて、和傘を普段使いにしたら、すぐ壊しちゃいそうで……」という方のために、ここだけは押さえてほしいコツをご紹介します。
1. 開くときのポイント
和傘の開き方
 
和傘(wagasa)岐阜
無理に開こうとすると、折りたたまれた和紙の部分がクシャクシャになったり、骨に負担がかかる原因に。
〔こんな開き方は絶対やめて!〕
・歌舞伎役者みたいに、振り回して風で開く
・閉じているところに、手をもぞもぞと突っ込んで開く
 スマートな開き方を覚えると、長持ちするだけでなく、とてもこなれて見えますよ。
2. 和傘は、いつでも頭を上に!!
和傘の置き方
 和傘は洋傘とは逆。
 傘を立て掛ける際、手持ちを下、頭を上にしてください。
 頭に紐がついているので、ぶら下げておくと安全です。
 和傘にとって一番守りたい部分は、てっぺんの紙(合羽)がかぶさったところ。 ここに、和傘の竹を束ねて傘のかなめとなる木のパーツ「ろくろ」が入っています。
ろくろが雨水で腐ったり、衝撃で割れてしまうと、もう修理のしようがありません。
地面に置けるように、持ち手の一番下に金具がついているものもあります。
和傘(wagasa)岐阜
3. 強風の日は使わない
 風にあおられると、骨をアーチ状に曲げている洋傘より、まっすぐ骨が伸びている和傘はより壊れやすくなります。
和傘(wagasa)岐阜
4. 雨傘を直射日光に長くさらさない
河口「雨傘を日傘としても使えますか?とよく聞かれますが、和紙に油を引いているので炎天下にさらし続けると和紙がパリパリになって破れやすくなります。和紙が劣化してしまいます。雨傘として長く使いたい方にはおすすめしません。晴れの日用には、油を引かない和紙の風合いをそのまま楽しめる日傘がありますよ」
和傘(wagasa)岐阜

使ったあとのお手入れ

 濡れている傘の頭の部分を強く握らないようにしてください。  雨の日のご使用後は、半開き~全開にして、陰干しで乾燥させてください。前述のように、頭が必ず上で。
 倒れるほどの風が吹かない場所がよいですが、
 玄関やガレージなどの場所がない場合は、室内で、下にぞうきんを敷いて立てかけておくと雨水を吸ってくれます。
 河口「まずタオルなどで軽く水気をふき取ってから陰干しするとより持ちがよいと思います。(といいつつ私は陰干ししかしてないですけど)」
 和傘は雨が染みてくることはありませんが、撥水というよりも雨水がしっとりと傘の表面になじむように防水します。
 一晩ほど乾かして、触ってみてパリッとしているな、と思ったら、乾燥終了です。
 日傘の場合は雨に対応していないので、万一ぬれてしまった場合は、完全に乾かしてからたたみます。
和傘(wagasa)岐阜   和傘(wagasa)岐阜

使わない日の保管法

 箱などに入れて大事にしまわないで、まずは締め輪をはずして、風通しの良いところにぶら下げて保管してください。
 湿気の多いところでは、カビがはえる恐れがあります。
 しばらくご使用にならないと、油が固まり和紙がくっつき合い離れにくくなる場合があります。 無理に開こうとせず、ドライヤーなどの温風であたため、手元を回しながらゆっくりと開いてください。
 とくに、夏の車中など高温になる場所に傘を長時間置いておくと、油が溶けて固まりやすくなるので、避けてください。
 油がだんだん黄みを帯びてきますが、それも風合いとして楽しんでいただくか、 気になる方は、傘の色味が最初から黄色や黄緑のものを選んでいただければ、目立ちにくいです。
和傘(wagasa)岐阜

コンビニやスーパーで、傘立てに入れる?バスや電車ではどう持つ?

和傘専用の傘袋を持っていると便利
 和傘のヘビーユーザーのみなさんは、 「コンビニでは、さすがに傘立てには入れないけど、外壁のすみに立てかけておくよ」 と言いますが、高価な物だから盗難が心配という方もいらっしゃるでしょう。
また、デパートなどのビニールの傘袋は、細すぎて和傘が入りません。  和傘は頭が上と繰り返し書いてきましたが、洋傘のように持ち手が J の形になっていない和傘は、 バスや電車でお財布を出す時など、手がふさがって脇に抱えてしまうと服が濡れてしまいます。
 そこで便利なのが、和傘用の傘袋。取っ手がついていますし、使わないときはくるくる巻いておけます。
 専用の傘袋も販売していますが、撥水の布で自作してもよいと思います。
 なお、傘袋に入れるときも、持ち手は下です。
 日傘は持ち手を外すことができます。携帯に便利です。
和傘(wagasa)岐阜

シロウト脱却!きれいな持ち方で写真に写るには?

竹のように、まっすぐに
和傘(wagasa)岐阜
 この記事の写真でもさんざん柄を肩にかけていますが、傘の絵柄が多く見えるので、歌舞伎役者のように斜めに持った写真が数多く見られます。
 実際持ち慣れていないと和傘は洋傘より重いので、つい肩にもたせかけてしまうのです。
 しかし、芸妓・舞妓さんが和傘を持っている写真を見ると、必ず柄は肩にかけずにまっすぐ持っています。  
和傘(wagasa)岐阜
 柄をまっすぐ持っていると、すらりとシャープに見えますし、マナーに詳しい方からも「解ってますね」という感じになります。
 何より着物で雨に和傘をさすときは、まっすぐ持っていないと帯が濡れるのです。
 和傘が顔に近いと、顔に和傘の色がかぶさってくるので、そういう意味でも和傘は顔から少し離して柄の下のほうを持つときれいな顔色になります。
 
 まっすぐ持つのが重くてつらいという方には、写真のような日傘だと、一回りサイズが小さく、軽くすみます。
また、小蛇の目、小番傘といったひとまわり小さい雨傘も作られています。
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和傘美人になれる、素敵なしぐさ

1. 雪の日に
 和傘は、たいてい二段階に開くようにハジキ(止具)がついています。
 雪の日は、傘の上に積もった雪の重みで和紙に負荷がかかると傘が傷むので、和傘を少しすぼめた状態で使うと、雪が滑り落ちます。
2. 傘かしげ
 狭い道で互いに傘をさしている者同士がすれ違うとき、相手と反対側に傘を少し傾けることで、相手に雨露がつかないようにするマナー「傘かしげ」をご存知ですか?江戸しぐさと呼ばれますが、江戸時代からあったマナーかどうかは、諸説紛糾しているので触れません。
ただ、こんな風に、相手をちょっと思いやる気持ちが現れれば、より、和傘を持っている和美人になれそうです。

ところで、和傘っておいくらぐらいなの?

 和傘CASAで取り扱っている、職人が手作りした岐阜和傘は、 無地 20,000円(税別)~ 柄物 36,000円(税別)~ となっています。柄や張り模様、和紙の違いなどによって、値段が変わります。
和傘CASA オンラインショップ
伝統と職人技を大切にしつつ、現代の感性にあう岐阜和傘を取りそろえています
(岐阜県岐阜市湊町29)
 伝統を受け継ごうとがんばっている若手職人の新しい感性が反映された美しい和傘もあります。
若い人にもきっとお似合いです。
 観光地のお土産物屋で売られている、1万円以下の和傘はたいてい中国製です。
 洋傘の骨が8本ほどなのに対し、和傘は30本以上。岐阜和傘の場合、標準的な蛇の目傘で44本か46本、番傘で48本の骨があります。骨が多いほど手間がかかります。
 上で書いたように、ちょっと上質なコートやバッグと同じくらいの金額といえます。日々使ってぜひ元をとってください。
和傘(wagasa)岐阜

なにはともあれ、和傘を楽しむことから!

 長々と書いてきましたが、もともとは生活の道具として日本人の日常にあったものです。
 和傘に魅了される人が増えています。
河口「かしこまらず、気軽に使ってみてください。使わずに大事にしまい込んでいても、自然素材ですから少しずつはどのみち劣化します。
大事に使えば案外長持ちします。個体差もあるので、絶対に10年もつといった言い方はできませんが。
和紙が少し破れた程度なら、障子の穴をふさぐみたいに、小さい和紙を貼ってふさげばいいですよ。

和傘CASAは、若いスタッフが和傘を売っているので、買う敷居も低いのではないでしょうか。
わからないことは、なんでもきいてください。
ご購入いただいた方には、使い方のしおりもお渡ししています」

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